気づかないうちに進んでいた腎臓への負担

血圧と腎臓、そしてあの日の炭酸泉の記憶
静かに進む「体の変化」
体は、ある日突然壊れるわけではない。
静かに、気づかないうちに、少しずつ変わっていく。
今回の検査結果を聞いたとき、まず感じたのは「違和感」だった。
体調に問題はない。日常生活も変わらない。
それなのに、数値だけが「不健康」を示している。
尿タンパクが多い。
腎臓に負担がかかっている可能性があるため、専門医に診てもらうこととなった。
さらに検査を進めた結果、腎臓の形や基本機能には異常は見られなかったが、
「腎臓内の血管に、軽い梗塞が見られる」と言われた。
その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
ただ一つはっきりしていたのは、「何も感じていないのに、体の中では何かが起きている」
という事実だった。

腎臓は「沈黙の臓器」
腎臓は、沈黙の臓器と呼ばれる。
「“沈黙の臓器”というと膵臓が有名だが、実は腎臓も同じように、静かに進行する臓器である」
多少悪くなっても、痛みも違和感もほとんど出ない。
だからこそ、気づいたときにはすでに進行していることが少なくない。
腎臓の役割は、血液をろ過すること。
その働きを支えているのは、無数の細い血管である。
血圧が高い状態が続くと、この細い血管に負担がかかる。
じわじわと傷つき、ろ過機能が落ちていく。その結果として現れるのが「尿タンパク」だ。
今回の私の状態は、まさにその入口に立っているようなものだった。
血圧は「数字」ではなく「臓器を守る指標」
血圧は、140程度。
一般的には「やや高め」という認識かもしれない。年齢的にはそれほど高いとも言えない数字だと感じる。
しかし医師は言った。
「腎臓を守るためには、120くらいに抑えたいですね」
ここで初めて気づいた。
血圧は“数字の問題”ではなく、“臓器を守るための指標”なのだと。処方されたのは、バルサルタン。
血圧を下げると同時に、腎臓の血管を守る薬だという。
利尿作用があるため、水分をしっかり摂るようにとも言われた。
生活習慣の見直しと現実
同時に、生活習慣の見直しも求められた。
卵やレバーを控えること。塩分を意識すること。間食を減らすこと。
できることから、少しずつ変えている。
ただ一方で、ここ一年、運動はほとんどできていない。
(趣味と実益も兼ねた)温浴施設へ行く時間も取れていない。
頭ではわかっていても、生活の中で実行することは簡単ではない。
この現実もまた、多くの人と同じだと思う。
15年前、体が変わった実感

そんな中で、ふと、15年前のことを思い出した。
当時、私は一度、高血圧の薬を服用していた。
しかしその後、血圧は劇的に改善し、長い間、薬なしでも120以下を保つことができていたのだ。
理由ははっきりしている。
ランニングを始めたこと。
そしてもう一つ――
毎日、炭酸泉に入る生活をしていたことだ。
温浴施設に勤務する仕事柄、高濃度人工炭酸泉に毎日入れる環境にあった。
いわば、特殊な条件ではある。
ただ、それでもはっきりと言えるのは、
「あの時、体は確実に変わった」という実感だ。
血流が良くなる感覚。
ぬるいのに、しっかり温まる感覚。
そして、体の軽さ。
数値としても、体感としても、明らかな変化があった。
常連客の言葉にあった「重み」
当時の施設には、私より年上の常連客が多くいた。
彼らは口を揃えてこう言っていた。
「ここに来ると調子がいい」
「家の風呂とは違う」
「疲れが抜ける」
医学的にすべてを説明できるわけではない。
しかし、長年通い続けている人たちの言葉には、確かな重みがあった。日常のなかに、体を整える時間を持っている人たちだった。
知らぬ間に、あの頃の常連さんたちと同じ年齢になったのだと思うと、感慨深いものがある。
病気は静かに、しかし確実に進む

もちろん、炭酸泉がすべてを解決するわけではない。
腎臓病が進行すれば、やがては透析が必要になる可能性もある。
週に何度も通院し、数時間を機械につながれる生活。
実は、私の母の晩年もそんな苦労をしていた。また、心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる疾患へとつながることもある。
高血圧は、単独の問題ではない。さまざまな病気の入り口である。
今できることを、少しずつ
だからこそ、今の段階で気づけたことには意味がある。
最近は、できる範囲で、家でも湯船に浸かるようにしている。
家庭用の炭酸入浴剤を使うこともある。
かつてのように、毎日高濃度の炭酸泉に入れるわけではない。
それでも、「何もしないよりはいい」と思っている。体は、急には変わらない。
しかし、確実に積み重なっていく。
体は正直で、そして応えてくれる
60歳を過ぎて、はっきりと感じることがある。
体は正直だということだ。
無理はきかないし、放っておけば確実に衰えていく。
しかし同時に、手をかければ、まだそれなりに応えてくれるという感覚もある。もし、今、特に不調を感じていないとしても。
血圧の値が少し気になっているなら。
それは、体からの静かなサインである。
炭酸泉という選択肢
食事を見直す。
少し体を動かす。
湯船に浸かる。
その中に、炭酸泉という選択肢があってもいい。
炭酸泉は、魔法ではない。
しかし、続けることで、体の変化を感じられる可能性がある。少なくとも私は、そういう時間を過ごしてきた。
そして今、もう一度、体と向き合う時期に来ている。