「スーパーホテル」快適の秘密

─ スーパーホテル統括支配人・大木さんが守り続ける“第二の我が家”という考え方 ─
ホテル業界は今、かつてない活況を迎えている。
円安の影響もあり、日本を訪れる外国人旅行者は増え続けているからだ。東京、大阪、京都、北海道といった主要観光地では、多くのホテルが連日満室に近い状態だという。
ビジネスホテル業界も例外ではない。
その中で全国170店舗を展開するスーパーホテルは、「快適な眠り」と「第二の我が家」をコンセプトに、多くの宿泊客から支持を集めている。
東京や大阪の主要店舗では、ご多分にもれず宿泊客の多くをインバウンド客が占める。
そんなスーパーホテルの理念を、そのまま体現しているような人物がいる。
東京八重洲店、銀座店、池袋店を統括し、大阪の複数店舗も担当する統括支配人の大木さんだ。
「第二の我が家」を本気で実践するホテルマン
大木さんはもともとアパレル業界で働いていた。
約20年前にホテル業界へ転身し、スーパーホテル独自の「ベンチャー支配人制度」に参加した。
夫婦で一つのホテルを任され、実際に経営を行いながら経営、運営を学ぶ制度である。大木夫妻は11年間、この制度の中でホテル経営を経験した。
その後、正社員としてスカウトされ、現在は複数店舗を統括する立場になっている。東京だけでも担当する客室数は700室を超える。
しかし、大木さんの話を聞いていると、「規模の大きなホテルを運営している」という印象よりも、「人との関係を大切にしている人」という印象の方が強く残る。
まるで、ペンションのオーナーのようだ。
その象徴が、この言葉だった。
「スーパーホテルのモットーは、お客様の第二の我が家であることなんです」
この言葉を裏付けるエピソードがある。
統括という現在の職務に就く前、支配人として6店舗ほどを経験してきた大木さんには、異動先を追いかけるように宿泊する常連客がいたという。
ホテルを選んでいるのではない。
大木さんを選んでいるのである。
私は思わず尋ねた。
「ビジネスホテルで、そこまでお客様との関係を築くことはできるのですか」
すると大木さんは、当たり前のように答えた。
「可能な限りコミュニケーションを取ります。お誕生日のお祝いメッセージを送ることもありますし、一緒に食事をすることもあります」
さらに、
「我が家に帰ってきた家族と、親密なのは当たり前ですから」
と続けた。
建前ではない。
本気でそう考えていることが伝わってくる。
怒っても人は変わらない
話題はスタッフ教育へ移った。
複数のホテルを統括し、多くのスタッフを育成している大木さんに、
「絶対にやらないことはありますか」
と聞いてみた。
返ってきた答えは、
「怒らないことです」
そして続けてこう話してくれた。
「僕は絶対にスタッフに感情的になりません」
さらに、
「怒っても人は変わらないと思っています」
とも語った。
実は大木さん自身、若い頃はかなりやんちゃだったという。
その頃、多くの人から怒られた。
感情的に叱られたこともあった。
しかし、それによって自分が変わることはなかった。
むしろ、本気で向き合い、信じてくれた人との出会いが自分を成長させたという。
「我慢強く見守ることが大事なんです」
「大事な(人財)スタッフの能力を見極め」
見守る。
信じる。
それが大木さんのマネジメントの原点だった。
快適な眠りをつくるために
現場の話になると、大木さんの言葉の温度が少し変わる。
スーパーホテルが最も大切にしているのは「快適な眠り」だという。
枕。
パジャマ。
照度。
ベッド。
香り。
音。
眠りに関わる要素を常に研究している。
その中で創業以来変わらず大切にしているのが大浴場だ。
全国の施設に大浴場が設置されている。
一日の疲れを癒し、心地よい睡眠へつなげるためである。
ホテルマンとして、お風呂で最も大切にしていることを聞くと、
「温度ですね」
即答だった。
設定温度は41度。
熱すぎず、ぬるすぎない。
誰が入っても気持ちよく感じられる温度を守り続けている。
お風呂の現場を知る私にとって、この答えは非常に納得できるものだった。

炭酸泉が担う役割
スーパーホテルの多くは運び湯で、天然温泉を利用している。
一方で、一部の施設では高濃度人工炭酸泉を採用している。
理由を聞くと、
「温泉を運べない立地もありますから」
という現実的な答えが返ってきた。
そして続けて、
「やっぱり天然温泉という言葉は、お客様に喜ばれます」
とも話してくれた。
確かにその通りだろう。
外国人旅行者にとっても、日本の温泉文化は大きな魅力である。
ただ、炭酸泉にもまた別の価値がある。
シュワシュワとした泡付き。
少しぬるめの温度。
長めにゆっくり浸かる入浴スタイル。
不思議なくらい身体が温まり、その心地よさは快適な眠りにもつながっていく。
長湯が苦手な人でも入りやすい。
熱いお風呂に慣れていない外国人旅行者にも受け入れられやすい。
快適な睡眠を追求するスーパーホテルにとって、炭酸泉は非常に相性の良い設備だと感じた。
この人がいるホテルだから
機能的なビジネスホテルでありながら、どこか個人経営の旅館のような温かさがある。
その理由は、マニュアルでは説明できない。
「第二の我が家」
という会社の理念を、本気で信じている人がいるからだろう。
会社の方針に合わせたのではない。
もともとの生き方が、その理念と重なっていた。
東京八重洲店の炭酸泉に身を沈める。
細かな泡が身体を包み込む。
旅の疲れが少しずつほどけていく。
そして部屋に戻れば、心地よい眠りが待っている。
今日もまた、このホテルでは。
家族を迎えるような時間が静かに流れている。
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