日本で開発された高濃度人工炭酸泉の誕生秘話

わたしたち日本人は、おふろに入ることが大すきです。あたたかいおゆに入ると、こころもからだもリラックスできますよね。

そんなおふろの中でも、さいきん注目されているのが「炭酸泉」というとくべつなおゆです。とくに「高濃度人工炭酸泉」は、ただ気もちいいだけでなく、けんこうにもとてもよいと言われています。

今回は、なぜ日本で人工炭酸泉が開発されたのか、そしてどんなふうにわたしたちのくらしにやくだっているのかを、わかりやすくしょうかいしていきます。

なぜ日本で高濃度人工炭酸泉が開発されたのか

高濃度人工炭酸泉は、日本の企業である三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社(現在の三菱ケミカルグループ)が初めて製品化しました。1997年に発売されたこの装置は1000ppm以上の高濃度炭酸泉を人工的に生成する画期的なものだったのです。

なぜ人工炭酸泉を日本で開発したのか?

開発の目的は、もともと医療にありました。高濃度人工炭酸泉には血管をひろげて血流をうながす働きがあるため、特に閉塞性動脈硬化症(ASO)や高血圧症末梢血管障害のような病気の治療に役立つと期待されていたのです。

また、床ずれ(褥瘡)の治りを早めたり、冷え性の改善にも使えると考えられ、医療や介護の現場での利用を目的に開発が進められました。

病名 症状 炭酸泉の効用
閉塞性動脈硬化症(ASO) 足などの血管がかたくなって、血の流れが悪くなる病気。歩くと足が痛くなったり、しびれたりする。 血管が広がり、血の流れがよくなる。足先まで血が届き、痛みがやわらぐことが期待されている。
高血圧症 血圧がいつも高い状態が続く。放置すると心臓や脳に負担がかかる。 体をリラックスさせ血管をやわらかくし、血圧が下がる効果が期待される。
末梢血管障害 手足の先の細い血管の流れが悪くなる。手足が冷えたり、しびれたりする。 炭酸の泡が皮ふから体に入り血管を広げる。冷えやしびれの改善が期待される。
床ずれ(褥瘡) 長時間同じ場所に寝ていると血流が悪くなり、皮ふが赤くなったり傷ついたりする。 血流を良くし傷の治癒を助ける。刺激がやわらかく、治りかけの床ずれにも優しい。

自然の炭酸泉はとても少ない

ヨーロッパでは昔から、炭酸泉が医療目的で使われてきました。なかでもドイツのバーデン・バーデンは、世界的に有名な療養地として知られています。日本の高濃度人工炭酸泉は、こうしたドイツ泉医学に学び、天然の炭酸泉の研究をもとに開発されました。

日本は温泉が多い国ですが、自然にできた炭酸泉はとてもめずらしく、全国の温泉の中でも全体の0.5%ほどしかありません。さらに、日本の温泉法で定められている炭酸泉(250ppm)をはるかに超える温泉はほとんど存在しないのが現状です。

安定して使える装置の必要性

そこで、医療効果が見込める1000ppm以上の炭酸泉を、安定してお風呂で使えるようにするため、専用の装置の開発が進められました。三菱レイヨン・エンジニアリングは、炭酸ガス溶解モジュールとよばれる独自技術を生み出します。

この装置には、多層複合中空糸膜MHFという特別な膜が使われており、気体だけを通す構造になっています。

「多層複合中空糸膜MHF(たそうふくごうちゅうくうしまく)」は、とても細いストローのような形をした特別なフィルターです。

このフィルターは、

  • 何重にもかさなったうすい膜(まく)でできていて、
  • 気体(炭酸ガス)だけを通すことができるように作られています。
  • 水やほかのものは通さずに、必要なガスだけを通すことができるため、お風呂のお湯にきれいに炭酸ガスをとかすことができるのです。

これによって、入浴剤(50〜100ppm)の20倍もの濃さを安定的に実現できるようになりました。

この技術のおかげで、天然資源に頼らずに高濃度炭酸泉を供給できるようになり、温浴療法の新しい可能性が広がりました。

高齢社会と健康の課題にこたえる

日本では高齢化が進んでおり、65歳以上の人が全人口の30%を超えるといわれています。こうした背景もあり、現在では多くの企業が独自の技術で高濃度人工炭酸泉装置の開発に着手したのです。

高濃度人工炭酸泉は、身近な健康法としても注目されるようになりました。とくに、高齢の人に多い高血圧心臓の病気冷え症などには、「血の流れを良くする」という点で効果があると期待されているのです。

日本の入浴文化とよく合う

日本には「お風呂で体をいやす」という文化があります。毎日お風呂に入る人が多いため、もっと手軽に高濃度の炭酸泉を楽しみたいとの声が増え、今では様々な企業が独自の技術でこれを可能にしました。

今では、炭酸タブレット炭酸シャワーなどが商品として販売されており、短時間で健康や美容のケアができるアイテムとして、スパやエステでもよく見かけるようになっています。

  • 強い力でおす(加圧)
  • 水の流れでまぜる(攪拌)
  • 小さな泡をつかう(マイクロバブル)

などです。これによって、多くの銭湯やスーパー銭湯、ホテルの大浴場でも利用できるようになったのです。

さらに、炭酸タブレット炭酸シャワーなどが商品として販売されており、家庭や美容のケアができるアイテムとして、スパやエステでもよく見かけるようになっています。

まとめ

「高濃度人工炭酸泉」は、日本でうまれたすぐれたぎじゅつです。おゆの中にたくさんの炭酸をとかし、血のながれをよくするこうかがあります。これにより、高血あつ冷えしょうなどのびょう気のふせいや、けんこうづくりにやくだっています。

おふろがすきな日本だからこそ、このような発明がされたとも言えるでしょう。これからも、炭酸泉がもっと身近になり、たくさんの人のくらしけんこうをささえていくことが期待されています。

とても素晴らしい発明であり、効果のある人工温泉ですが、まだその存在を知らない人も多くいます。本サイトでは、これからも高濃度人工炭酸泉をもっと、もっと知ってもらうための優良な情報をお伝えしますね。

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