メーカー直伝☆高濃度人工炭酸泉の導入で失敗しない構造設計とは

ヴィータ販売株式会社・馬場秀明社長が語る“溶ける環境と抜けない構造”
炭酸泉ラボをご覧いただきありがとうございます。
高濃度人工炭酸泉の導入を検討する際、多くの施設が注目するのは「装置性能」ではないでしょうか。しかしながら、それ以前に導入した装置の能力が最大限に生かされる環境が大切です。
今回は、その環境の中でも構造上の課題について、『ヴィータ販売株式会社』の馬場秀明社長に装置メーカーの立ち位置からお話を伺いました。
メーカーのトップが語る「本当に大切な構造条件」を、導入前に知っておくべきポイントとして整理します。

高濃度人工炭酸泉は“装置”ではなく“状態”で決まる
”まず結論からお伝えします。私たちは装置メーカーですが、機械の話よりも、高濃度人工炭酸泉という(状態)を理解していただくことのほうが大切だと考えています。”
高濃度人工炭酸泉とは、炭酸ガス(二酸化炭素)がお湯に溶解している状態のこと。
つまり本質は、
・どれだけ溶けるか
・どれだけ抜けないか
この2点に集約されます。
“どれだけ優れた装置を導入しても、炭酸ガスが溶けにくく抜けやすい構造では、本来の性能は発揮できません。”
導入の成否は“設置環境”で決まる
最初に確認するのは炭酸ガスボンベの設置スペース
装置導入を検討されている施設に赴いて、意外にも、導入前に最初に確認するのは浴槽や配管、設備構造ではないそうです。
“最初に見るのは炭酸ガスボンベの設置条件です。”
炭酸泉は炭酸ガスが原料です。安定供給ができなければ、そもそも成立しません。
・1週間分の在庫を確保できるか
・安全に保管できるか
・交換動線が確保されているか
・直射日光や雨を避けられるか
“大型施設ほど、ここが一番の課題になることもあります。”

ガスボンベは重量も重く、場所もとります。また、直射日光にも弱いため、可能な限り日差しを避けた環境を作り出すのも必要。ガス供給環境は、構造の第一歩だそうだ。
溶けやすい浴槽構造とは
【深くて狭いほうが理想的】
物理的に考えると、水面が狭く、深さがある浴槽のほうが炭酸は抜けにくい傾向がある。
理想だけを言えば、深くてコンパクトな浴槽の方が有利です。ただし快適性とのバランスもありそうもいきませんよね。
できるだけ多くのお客様に、可能な限り手足をのばしてくつろいでいただきたい。炭酸泉はぬる湯で運営するので、どうしても他の浴槽と比べて長湯になる。半身浴を楽しむ人もいるので、運営としては広くて浅い方が良いですからね。“
理想と現実は相反関係のようだ。
【配管は短さより“直線”】
装置から浴槽までの配管距離が短いのは有利ですが、それ以上に重要なのは直線性。
“配管に角度があると乱流が生じます。そこでガスが抜けやすくなります。いわゆる『鳥居配管』のような上下屈折は、炭酸泉にとって不利な構造です。“
【吐出口は水面より下が基本】
“滝のように水面上から注ぐと、その瞬間にガスが抜けます。”
理想は浴槽内の水中から横方向に吐出する構造。水中滞留時間が長いほど、保持率は高まるそうだ。
多くの施設では、浴槽の底から循環湯が吐出する構造になっているが、これだと勢いのある吐出湯が素早く水面に到達する。それだけガスが抜けやすくなるようである。
“配管を増設したり、浴槽内に新たな吐出口を設けるのは、なかなか大変です。でも、可能性があるのであれば、そのような改善ができると良いですね。”
【オーバーフローは炭酸の天敵】
“オーバーフローはどうしてもガスが抜けやすくなります。可能であれば量を抑える、回収方法を見直すなどの工夫が必要でしょう。“
※オーバーフローとは、お湯を浴槽を超えて回収(または排水)する仕組みです。
水質・pH・温度が溶解度を左右する
【アルカリ性は苦手】
“pHが高い、つまりアルカリ度が強いお湯は炭酸ガスを溶かしにくくなります。さらにカルシウムが多い水質も溶解効率を下げる要因になりますね。”
炭酸泉は弱酸性なので、ポンプや配管、浴槽の目地などにも影響を与えることがある。利用期間を重ねる中で、そのメンテも必要になる。アルカリの影響については、以下のようなこともあるようだ。
“既存施設では、浴槽の目地が炭酸泉によって溶け出します。高濃度人工炭酸泉は弱酸性だからです。そして、多くの場合目地はアルカリ性でカルシウムを多く含んでます。ですから、しっかり目地が飛んだ状態になれば、耐酸性の目地に入れ替えることをお勧めします“
【高温ほど抜けやすい】
“ビールは冷えている方がガツン!ときますよね。ぬるいと、泡だらけで気が抜ける。あれと同じです。温度が高いほどガスは溶けにくく、抜けやすくなります高温設定は、ガス消費量の増加と効率低下を招くのです。“
新築と改装の決定的な違い
【新築の強み】
・ボンベスペースを前提設計できる
・配管を直線設計できる
・耐酸仕様を選択できる
“炭酸泉を前提に設計できるのは大きな強みです。しかし、実態はさまざまな制約があって、炭酸泉だけのための設計になることは少ないですけどね。できるだけ、良い状態にしてもらえるように要望を出すようにしています。“
【改装で重要なのは“浪費しない”】
既存施設では制約が多くなります。
“どんなに優れた装置でも、溶かしたガスがダダ漏れでは意味がありません。”
改装では、
・流れの抵抗を減らす
・オーバーフローを見直す
・配管の屈折を減らす
など、“溶け込んだ炭酸ガスを逃がさない工夫”が品質を左右します。
装置は溶かす、構造が守る
最後に馬場社長は、こう締めくくりました。
“装置は炭酸ガスを溶かします。当社では常に高い技術でそれを可能にし、さらに無駄のない補給を行う装置であるとの自負があります。しかし、構造に問題があれば、必ず無駄が生じます。”
高濃度人工炭酸泉の導入で本当に大切なのは、
・安定したガス供給
・溶けやすい浴槽設計
・抜けにくい配管構造
・適切なpHと温度条件
これらを総合的に整えることです。
炭酸泉は設備ではなく、“溶解状態を維持する構造”で決まるサービス。導入時にどこまで「抜けない設計」を追求できるか。
それが、高濃度人工炭酸泉の品質を決定づけます。